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福祉を善行にしない② 「善行に金儲けは似合わない」というイメージ

2024年5月22日

取締役の阿部です。

前回の私の記事では

・福祉事業を善行とみなされることで事業に制約が発生する可能性がある

という点を記載しました。

 

この「福祉事業を善行とされることによる事業の制約」には、

下記のようなものがあるのではないかと考えています。

  1. 善行に金儲けは似合わないと社会から反発されてしまう
  2. 善行ではない利用者の権利(趣味嗜好など)が制限されてしまう
  3. 経済合理性に反する会社が許容されてしまう

 

本記事では1. について取り上げます。

  1.  善行に金儲けは似合わないと社会から反発されてしまう

 

金儲けというと響きは悪いですが、世の中の経済活動にはほとんど

等価交換が適用されており金儲けは生活上必須の「手段」です。

特に労働はイメージしやすいと思います。(労働=価値を金銭で受け取る行為)

 

この「手段」である金儲けが事業の目的になる場合に批判されることは

何となく感情的に理解できます。

一方で、受け手が満足する高いレベルのサービスの提供を目指す事業者が、

増えることそして、その付加価値に応じた対価を受け取る行為、

これは健全な姿と考えます。

 

しかし、問題をややこしくするのは福祉産業の場合、対価の大部分を

支払うのは国であり、公定価格(どんなに頑張っても単価は一定)

である点です。

 

つまり、高いレベルのサービス提供を目指す事業者が、通常の一般企業同様に

競合との差別化や自社サービスの磨き上げや規模の拡大を行うと、

世間の反発を招きます。さらにいうと実は一番反発するのは福祉業界の

方であったりします。

 

例を挙げて見てみましょう。

障害者福祉事業には、利用者に仕事を与えて給与を支払う事業があります。

 

中でも障害者と雇用契約を結んでいる施設は、労働基準法の遵守が

求められ、限られた労働時間の範囲内で最低賃金以上の稼ぎを保証

しなければなりません。

働いてもらうのだから、等価交換の原則から考えて当然ですよね。

 

これはつまり、就労支援だからといえども事業運営については、

普通の営利企業と同様の「成果」が必要であり、そのためには

営業活動やマーケティングなどの取り組みが必要です。

ところが、税金で運営されているこれら施設が大々的に成果に

こだわるとどのような評価がされるでしょうか。

例えば競合からは「民業圧迫だ」、「福祉施設にふさわしくない」、

「福祉施設のくせに金儲けに走っている」・・・

などと世間の反発を招くことは容易に想像がつきます。

 

よって、大多数の施設は、利用者に支払う時給以上の稼ぎを

出している、出そうとしているところは多くありません。

 

それどころか過去こんな事件がありました。

【岡山県】就労支援A型事業所の運営法人グループ(あじさいグループ)の調査報告書

https://chachacha.rgr.jp/databox/kurashikishi-Agatahoukoku.pdf

(本件の本質的な問題点はまた別の記事で解説します)

 

ちなみに、このような運営をしていても事業の黒字は可能です。

なぜなら成果が出ない分は国からの障害福祉サービスに支払われる給付金

により賄われるからです。

 

これは事業として健全でしょうか。

 

せっかく事業所として働ける障害者を雇用しても結局は給付費に

頼ってしまう、経済学の「効率的な資源配分」は達成できません。

 

結果的に現役世代の税金が無駄に配分されている状況となってしまいます。

 

また、福祉事業の運営の面だけでなく、障害福祉サービスを利用する

利用者ご本人にとっても大変な不利益です。

事業所側は、結局は給付費によって給与が賄われることがわかっているため、

積極的に利用者の能力を発揮させる必要もなく、通常の一般企業で働く際に

提供される能力開発の機会は得られないままです。

障害者が社会に貢献しなくてよいわけがありません。

 

福祉の名のもとに非合理的な活動の場を提供し続けることは、

当社が目指すようなまほろばではありません。

 

ここまでが福祉事業を善行とされることで起きる制約の一つ、

善行には金儲けは似合わないと社会から反発される

=適正な事業運営ができなくなってしまうことでした。